2011年7月3日日曜日

人や動物の知覚について

人や動物の知覚について

『動物たちの心の世界』マリアン・S・ドーキンズ
意識とは何か。リラックスした時の方が無意識にすらすらとうまくいくことが、緊張して、次はどうするのかと意識したとたんにミスをすることがある。よく知っていることや予測可能なことは、無意識の方が優れ、新しい状況や予測不可能なことには、意識のあるほうが優れているという。
「私」というものは、皮膚の下の目の奥にあるという。思考を脳に、心を胸に描く人もいるが、動物にもこのような「私」という心があるかという本である。動物は、意識によって問題を考え、望む結果を達成するには何をすればよいか、行動を起こす前に頭の中でシュミレーションすることが出来る。この再現能力が生活力となっている。自分がまだ体験していないことを、他人の成功や失敗から学び取る、聞いたり、読んだりしたことをジェスチャーでシュミレーションする再現能力である。相手の痛みや気持ちを想像する心でもある。

経験則の例として、コンピュータがどこまで会話しシュミレーションできるかがあげられている。
エライザ(ELIZA)というごく初期のコンピュータ・プログラムから多く学べるという。このプログラムは、患者の話を聞いている心理分析者の行動を模倣するように設計されている。
会話が途切れそうなときに、「最初に心に浮かんだことを話してください」などともっともらしく切り替えし、そしてコンピュータがキーワードを選び、「あなたの○○について話してください」という台詞の空白にキーワードを入れていくと、まるで会話が成立しているように聞こえる。たった数行のプログラムで可能であるという。



『動物は世界をどう見るか』鈴木光太郎
動物達がどのように空間を知覚しているか。同じ人間同士なら、同じであろうという前提でコミュニケーションを行っている。人間でも動物でも、本当に自分と相手は同じように知覚していると証明はできない。
かつて、被験者に体験や記憶、知覚内容を書かせた、主観的な心理学から、心理学を化学的なものにしようと、ワトソンの行動主義という流れがアメリカで生じ、人間や動物を刺激に反応する機械のようにとらえた。心を研究するはずの心理学が、心をあつかわなくなって久しい。やがて、人間と動物との心理の比較という目的が薄れ、スキナーボックス以降、単独の種の学習というテーマが重要視されてきた。

ネコを使った実験に、縦じまだけ見せて育てた猫、横じまだけ見せて育てたネコ、ネコのメリーゴーランドという実験がある。
縞模様を見せたネコは、逆の向きの縞模様に相当する棒を避けることができず、電柱にぶつかったり、倒木をまたげずにつまづいたりするという。また、メリーゴーランドにつながれた2匹のネコのうち、能動的に自分から歩いてぐるぐる回るネコは、目の前の物体に前足をかけて伸びをすることが出来るが、乗り物に載せられてぐるぐるまわるだけの受動ネコは、目の前の物体に正確に足を伸ばすことができず、障害物をうまく回避することができなかった。これは、対象を注視するために目を動かし、そこに前足をもっていくという、視覚と運動の協応が考えられるという。

脳が見ている映像は、目が二つでありながら、一つの像であり、しかも立体的に見えている部分と片目の部分との間に境目がない。
脳が、網膜に写る像に対して、補正や補充を行っている。網膜像はあくまでも材料であって、それをもとに製品として加工された映像を知覚している。
網膜では動かない映像は知覚できない。網膜は小刻みに振動することにより、血管や視神経が写らない。
また、網膜に変形して映った画像も、脳で正しく補正される。
脳の知覚は、他の運動神経や感覚器官と連動できるように、小さな頃から訓練すべきである。



現在の絵本や図鑑の欠点を挙げる。どこからどこまでが一冊の本かわからないほど、天然色の図柄が一面にちりばめられ、何冊か本が机の上に積み重なっていると、ウォーリーを探せのような状態で、多くの視覚情報の中から目的の本を探し出せない。雑誌も叱りである。
一方で、子供向きの本に、パステルカラーや境界線が不明の本、内容が抽象的過ぎるもの、知育ながら、子どもの工夫や想像を奪い、作業が何らかの意図を強制させるものなど、こどもには遊び方が難しいものが多い。できれば、遠景のようなパステルカラーの背景に目的のクリアな天然色の物体を置く、その物体ははっきりとした形や境界を持っている。迷路なら迷路、クイズならクイズ、こどもが指でなぞるならなぞりやすく、文字を読むなら読むことに集中できるように、配置に工夫が必要である。
目の不自由な子ども達の絵本のように、色と共に質感が異なる、ひし形や長方形などの図形が正確である、あまりにコラージュや加工を施しすぎると、小学校以降の図形認識に苦労する。

今の子ども達にも、実験者効果、クレバーハンス効果があらわれることもある。教室の空気を読むあまり、教師の答えて欲しそうな事をうまく類推してしまう、「世渡り上手の」「社交術の高い」子ども達である。2択で質問すると、かなりの確率で正当のほうを言い当ててしまう。
子ども達が、知覚を正常に発達させ、物事をきちんとシュミレーションできるような、幼少時からの教育が必要である。

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